患者さんの気持ちになるために床で寝てみた話。
こわかった。
動けなくて。
誰もいなくて。
冷たくて。
今日は患者さんとのやりとりで思ったことを書いていこうかなと思います。
くっそ眠たい午後からの勤務。
昼前まで家でだらついて病棟に出ました。
師長さんに声を掛けられる。
「病棟に来てすぐで悪いんだけど緊急の入院とってもらえる？」
はいきたー。
最近入院多いんだよなあ。
病棟の端っこで震えてる下っ端のメンズナースに拒否権はない。
「もちろんっすよ！ 入院取りたかったんすよー笑」
そんな軽口を叩きつつ入院のお迎えに行く。
夜中にトイレに歩かれている際にこけたとのこと。
便器の近くで転倒され、起き上がることができなかった。
朝方、這って電話の元まで行き、別居の家族へ連絡をしたという。
ありがち、だなァって思いながら救急外来の申し送りを聞いていた。
入院対応はかなり面倒だ。
正直な話。
平日であれば6人程度の受け持ち患者さんを持ちながら、検査出しやOPE出しなどをしないといけない。
それに加えて、委員会や会議も入ってくるので入院が来たらめんどくせーなって思う。
そんなことを思う自分に嫌気がさしながら患者さんと対面する。
年齢の割にしっかりとしたおばあちゃんだった。
「お迎えにうかがいました。お部屋の方にご案内しますね」
ご本人とご家族に挨拶をしてストレッチャーで病室に入る。
お部屋に着くとナースコールで同僚を呼ぶ。
「ちょっと揺れます。ごめんなさい。
いきますよー。いち、に、さん」
3人がかりでストレッチャーからベッドへと移乗をする。
電子カルテに、血圧計、聴診器をもってお部屋に伺う。
改めまして、入院の担当の看護師です。
こわかったですね。痛いところはないですか？
入院に関して分からないことが分からないとは思いますが
いつでもなんでも訊いてください。
よろしくお願いしますね。
いつも通りの定型文が口からこぼれる。
患者さんは手で顔を覆って涙を流した。
涙を流していた。
その言葉を聞いてか、暖かくて柔らかいベッドで安心したのか。
こわかった。
動けなくて。
誰もいなくて。
冷たくて。
元々小柄な背中をさらに小さくしてすすり泣く。
ああ、そうか。
そうだよなあ。
ひと晩、床で動けないと怖いよな。
だれも助けに来なかったらなんて考えるのかもしれない。
床は硬くて冷たい。
本当に患者さんは多くのことを教えてくれる。
これはあれだな。
床で寝てみよう。
いやほら。
体験してみないとわかんないじゃん。
他人の気持ちに寄り添う言うのは簡単だけど
それを体験として行うとより深いところで
「寄り添う」ことができるよね。
そこで床で寝てみました。
うーん、頭がわるい。
環境設定。
入浴後、寝巻に着替える。
歯磨きを終え、
今日もかっこいいなお前は。
そう自分に伝える。
この行程が重要だと思ってる。
自分の機嫌は自分で取れる男になりたい。
▽過去記事
床で眠るにはまだ条件がある。
布団・枕は使用不可。
そう。縛りプレイである。
我が家には家訓がある。
なめプは恋の落とし穴
深い意味はない。
「なめプ」とは「舐めたプレイ」のことだ。
つまりだ。
人生は全力で生きた方が楽しい。
よくわからんが。
これは秋のことだ。
環境は整った。
床に横になる。
気持ちは酔っ払いだ。
天井が見える。
子どものころは天井のシミが顔に見えて怖かったっけ。
電気を消す。
おやすみの世界。
思ったよりもあっさりと眠れた。
疲れていたのかな。
おはようの世界。
「のど、いってえ…」
最近流行している丁寧な生活とは程遠い声だった。
かすれる。
背中も痛い。
尻も肩も痛い。
ついでに頭痛までする。
そ
ん
な
床寝デビューだった。
この経験からの学び。
転倒されていた患者さんには優しくしよう。
冷たくて硬い。
なんっていうか…
孤独を感じた。
そんな体験でした。
数日後、熱がでた。
風邪であると内科の先生に言われた。
みんなは風邪をひかないようにね。
▽過去記事
