メンズナースのつぶやき

メンズナースが仕事から日常まで幅は広くしゃべります。

印象に残っている患者さんのお話。

 タイトルの通り印象に残っている患者さんのお話をします。

 

ちょっとまじめにお話しちゃお〜☺︎

 

 

数年前に若い男性が入院してきたんです。

頭部打撲で半身麻痺+高次脳機能障害、 下肢の骨折という重症度が高い患者さんです。

若く、4人のお子さんがいらっしゃる男性でした。

 

入院後に緊急で頭部のOPEと下肢の骨折のOPEを実施しました 。

OPEが終わり数日すると全身管理の状態から骨折治療後の安静の 確保などの看護が大きなウェートをしめてきます。

 

 

安静やリハビリ、その後の経過さにおいて、 大きな問題になってくるのは、 頭部打撲の影響で高次脳機能障害が発生していたことです。

 

脳は外部から得た刺激を知覚し、言葉に変えたり、 記憶し学習などをします。 記憶した知識や経験から判断を下すこともします。 このような機能を高次脳機能といいます。

 

脳が何らかの影響でダメージを受けると言語、記憶、注意、 感情のコントロールなどの知的機能が破壊され「高次脳機能障害」 と言われる症状が発生します。

 

この患者さんの場合は、 見当識障害や言語障害などの症状が出ていました。

 

 

イメージしにくいと思うのですがここがどこだかわからない。

自分が誰だかわからない。 自身がけがをしていることを認識できていないといった状態です。

 

食事も認識することができず、 鼻から胃まで管を入れて注入食をしていました。

トイレまで行くことはおろか尿意を認識できず、 おむつに失禁状態でした。

気管切開といって首に直接穴をあけてそこから呼吸管理を行うこともしていました。

 

また、脱抑制状態であり、 暴れたり叫んだりすることもありました。

 

 

 

しばらくの状況としては

気管切開の管理や下肢の安静の保持、 ベッドから転倒することでの新規の打撲を防ぐため、 栄養用のチューブの自己抜去の予防のためにベッドに抑制帯をつけ て生活の制限を掛けざるをえない状況が続きました。

体幹に抑制帯を巻き、両手首を縛りベッドに縛り付けた状態です。

 

 

 

ご家族さんの不安…

ご家族さんはとても熱心にお見舞いにいらっしゃっていました。

 

奥さんは毎日のように病室へ来られ、 まだ小さなお子さんもいらっしゃるので病室は賑やかなものでした 。

 

 

今考えればあのにぎやかさは奥さんもお子さんも大きな不安感を抱えてのものだったのではないかと思います。

 

 

 

元気に働いていた夫が、父が自分たちのことを認識できず、 なにかもわからない点滴や管をたくさん入れられて、暴れるからとベッドに縛られているのを見るのはきっとつらい時間だったと思います。

 

 

 

ひととしての尊厳…

 

「この人の男として、夫として、 父親としての尊厳はどこにあるのだろうか」

と僕は思っていました。

 

 

妻や子供のことを認識できず、現在の食事や排せつ、 縛られている姿を見せることはとても苦痛であるだろうなと思いま した。

 

 

そこから、 先生にも先輩にもたくさん相談してベッドを撤去して床に直接ベッ ドを敷いて転倒することがないようにして抑制帯の除去をすること や、 抑制帯を取るためにベッドサイドで記録を書くなどして過ごしても らいました。

 

 

また、ご家族さんの多くは昼以降にご面会されるため、 本人さんの髭剃り、歯磨き、 髪形を整えることを丁寧に実施しました。

 

男前あげといた方がいいやんな☺︎

  

 

 

奥さんともできる限り顔を合わせてお話を聞いて関わるようにして いましたが、 今の現状がつらいということを表出できる場を作ることはできませんでした。

 

 

家族への介入ができないと悩んでいることを相談していたベテラン ナースが奥さんに向けてこう伝えてきました。

 

 

「今はつらいけれどきっと笑い話にできる日が来るはず」

 

 

 

その言葉を聞いた奥さんが夜中の病室で静かに涙を流されていたことを今でも覚え ています。

 

 

 

その後は、本人さん、 ご家族さんの頑張りで気管切開も閉鎖することができ、 胃管も抜けました。

 

上手に言葉が出ないこともありましたが、 笑顔でお話ができるようになり、骨折も治り、 杖を突きながらですが歩くことができるようになりました。

 

 

退院の前にご本人の口から退院することを伝えてもらった際には目頭が熱くなりました。

ちょっとだけ泣いたのは秘密です。

 

 

 

 

この関わりは自身の看護観の根底にあるものであると思います。

 

 

今でこそ先輩や後輩から患者さんとのかかわりについての相談をされるようになりましたが、ふとした時に思い出す患者さんと家族のうちの1 つです。

 

 

 

 

やっぱり僕はやさしい看護師になりたいです。