アイスを食べてほしい話。
今回は看護師の話です。
最近はえっちな看護師をしていたのでまじめな看護師になろうかなと思います。
「誤嚥」って言葉を知っていますか?
誤嚥とは
食物や唾液は、口腔から咽頭と食道を経て胃へ送り込まれます。食物などが、なんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態を誤嚥(ごえん)と呼びます。誤嚥は肺炎の原因ともなります。
誤嚥に近い状況として、喉頭流入があります。喉頭流入とは、食物が喉頭に流れ込むものの、声門より上にとどまり、気管には侵入しない状態です。
http://www.kishoku.gr.jp/public/disease05.html
ご飯とか飲み物を飲み込もうとした時にむせたりするやん?
あれのこと。
今回は若い人にはあんまり関係ない「誤嚥」について書いていきます。
アイスを食べてほしい話。
「先輩、困ったことがあります」
昼過ぎの眠たい病棟で後輩が声を掛けてくる。
打っていたキーボードから手を離さずに答える。
「どうしたよ? 誰か状態悪いの?」
後輩「患者さんのご家族が来てるんですよ~。アイス持って」
「アイスもってきてる。」
個人的にはアイスで一番好きなのは『爽』だ。
冷凍庫から出してすぐのシャリシャリ感がすきだ。
だけど、少し溶けてからが本番だと思う。
そんなことを思いながら詳しく話を聞いてみた。
要約するとこうだ。
「入院中の患者さんの家族がアイスを持って来ている。
それを食べさせてあげたいと言っている。
だけど、その患者さんは嚥下機能が悪い。
食べさせてしまうとむせてしまうかもしれない。
実際に栄養補給のために胃瘻を作っている患者さんです。
どう対応したらいいでしょうか?」
え~ どうしようなそれ~??
普通に俺も困るんやけど。
看護師としての視点でこの情報を読み解こう。
胃瘻を作ってるのはなぜか??
てかそもそも胃瘻ってなんだ?
「経管栄養」とはチューブやカテーテルなどを使い、胃や腸に必要な栄養を直接注入することです。
https://www.irs.jp/article/?p=515
お腹に穴をあける手術をしてそこから栄養剤を入れることですね。
胃瘻のことが少しだけわかったので続けよう。
なぜ胃瘻を作るっているかについて
要約に書いてある通り嚥下機能が悪いからだ。
人間は食物を口に入れて咀嚼し、飲み込み胃に送る。
加齢や疾患などによってその飲み込む機能が低下しているとむせてしまう。
胃ではなく肺に入ってしまうのだ。
むせてしまうと、肺炎になる。
いわゆる誤嚥性肺炎だ。
物を飲み込む働きを嚥下機能、口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことを誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症します。
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=11
つまり、この患者さんにアイスを食べさせるのはむりだ。やめよう。
って思うんだよね~。
安全だけを重視するのであれば。
だけど、家族は患者さんのためにアイスを持ってきたそうだ。
胃瘻があることを知っていても。
口での栄養摂取をしていないことを知っていても。
そんなん無理です~って言いたくなくね?
ここまでで2つの介入のポイントが出てきた。
①患者本人の嚥下機能の低下
②アイスを食べさせたいという家族の希望
そういえば、これを相談してきたのは誰だったっけ~????
うちの可愛い後輩じゃね~??
「後輩はどうしたいと思ってんの?」
後輩「アイス食べてほしいですよね。難しそうですけど…」
「じゃあ、食べてもらうか」
後輩「いいんですか?」
いいに決まってんだろjk。
いや、決まってはないけど。
医療者としてそんなゆるく決めちゃいけないけど。
あるんだよな~
秘密兵器。
とろみである。
医療・介護の現場ではおなじみ。
お茶とかに混ぜてトロトロにするやつだ。
これをアイスに混ぜるのだ。
ちなみに家族がもってきていたアイスは『スーパーカップ』だった。
スーパーカップにとろみを混ぜ込むのだ。
練り続けること数十秒…
トルコ風アイスの完成である。
実食のアイス。
前もってご家族さんに誤嚥のリスクを説明しました。
さらに吸引器を準備して食べていただきました。
ちなみに自分はチームが違うのでこの患者さんのことはカルテでしか知らない。
ご高齢でほとんど寝たきり。
声を掛けても反応はほとんどない。
そんな患者さんでした。
ご家族さんがスプーンのアイスを口に運ぶ。
ゆっくり、ゆっくりと口を動かされる。
少し、時間が空いて喉元が飲み込む動きをする。
笑顔になる患者さん。
喜ぶ家族。
微笑む後輩。
むせないか内心どきどきな俺。
結局、数口しか食べることはできなかったけど穏やかな明るい時間だったと思う。
あとから後輩にきいた話なんだけど
この患者さんの笑顔をはじめて見たんだって。
とっても素敵じゃないか。
アイスを食べさせたい家族も。
その想いを無理とは言わずに相談してきた後輩も。
アイスを食べることができた患者さん本人も。
安全の確保はもちろん大事なんだけど
看護って自由でいいんじゃないかな。
なんだかひさしぶりに看護師の話をしてしまいました。
髪を染め、ひげを伸ばしている真面目な看護師です。
えっちなことも好きです。