ホ別3万円の女の子と同居していた昔話。①
お金じゃ大切なものは手に入らないっていうけどあれは嘘。
ほとんどのものはお金で買える。
赤いリップも。
おしゃれなワンピースも。
お出掛けするのが嬉しくなるような靴も。
お金がない人は選ぶことができないだけ。
年下の女の子が話す言葉にしては夢がないなと思っていた。
そりゃあそうだよな。
彼女は今日も男に抱かれて帰ってくる。
ホテル代別の3万円で。
当時はわからなかったけど。
それって安いんだろうか。高いんだろうか。
いまだってわからない。
今わかることはその子は怖かっただろうなってこと。
このお話の続きです。
これは作り話じゃァないんだけど。
多少の脚色は許してね。
自分の人生をデザインするのはいつだって自分なんだから。
ホ別3万円の女の子と同居していた昔話。①
足軽も驚きのフッ軽具合で同居を始めて数日。
ふと思った。
この子のことなんにも知らねえじゃん。
なんなら名前と性感帯しか知らない。
苗字も聞いたことない。
案外なくね?
フルネームを聞く機会って。
職場や学校以外で知り合うと。
出会い系サイトで知り合うとなおさらそうだ。
LINEの登録名が『a.*』とか、『Y』とかそういう登録名にしている子もいる。
別に関係ないんだろうけど。
そういう名前の子を見るとこの子も援助交際してるのかなって思ってしまう。
どんな偏見だよ。
その子の名前も俺は知らなかった。
知る必要もないと思っていたし。
おもしろそうだからとノリで同居を始めたし。
あとから教えてもらったけど最初に教えてくれた名前は偽名だった。
ついでに2回目に教えてくれた名前も偽名だった。
3回目でやっと本当の名前を教えてくれてたけどもう忘れちゃった。
人生はライアーゲーム。
どんな共同生活を送っていたかと言うと…
毎晩3時間くらい連絡がつかなくなる。
ほとんど毎日。
夜にはいなくなる。
19時から22時くらいかな?
察しがいい読者ならわかるだろ。
彼女との出会いはいわゆる援助交際。
22時過ぎに合鍵でドアを開けてうちに帰ってくる。
彼女にとっては「帰ってくる」って感覚だったのかはもうわからないけど。
帰ってきた彼女はすぐにシャワーを浴びる。
シャワーを浴びて歯を磨いていた。
そして、遅い晩御飯を食べる。
残業や夜勤で遅くなることが多い俺と一緒にいただきますとごちそうさま。
「居酒屋でアルバイトをしてたからかな。
いただきますを言う人がいいな。」
そんな風に笑う彼女は男に抱かれて帰ってくる。
3万円で。
一緒に布団に入って今日はどんな人と会ったのかを報告してくる。
そんなこと聞いてもいないのに。
触り方が乱暴で嫌だったとか。
話がつまらなかったとか。
お金を出すのを渋ったとか。
おっさんだったとか。
ひとしきり話を終えると耳元で囁く。
「しようよ」
「安心した」
事が終わったあとにそう零す唇は冷たかった。
今、思えば怖かったんだろうなと思う。
知らない男に抱かれることも。
性行為にはリスクが伴う。
妊娠や、性病など少なくないリスクが。
金を払って若い女の体をむさぼりたいと思う男がまともなわけがない。
この家に帰ってきていいのかも。
すべてが不安だったんだろうな。
それを身体で埋めていたんだろうな。
彼女は浪人生だった。
時間もお金もない。
家族も学費を出してくれない。
それなら、自分の身を削ってでも稼いで東京に出るのだと話していた。
大学生になりたいのだと。
自分はそこそこ可愛いから東京に出てパパでも見つけて大学に通うのだと。
シンプルに
鬼メンタルすぎる。
煙草をくわえて彼女は唇を震わせる。
お金じゃ大切なものは手に入らないっていうけどあれは嘘。
ほとんどのものはお金で買える。
赤いリップも。
おしゃれなワンピースも。
お出掛けするのが嬉しくなるような靴も。
お金がない人は選ぶことができないだけ。
少し前に親に付けられたという痣を見せてきた。
可哀想だとも思ったけど綺麗だなって感じたのを覚えている。
この子はすごく強いなって。
そんな風に馬鹿みたいに思ったのを今でも覚えている。
自身で未来を変えようと傷だらけになりながらもがいていた。
今ならあの子のすごさがわかる。
俺できないもん。
まあ、春に出会って秋にはお別れするんだけど。
気が向いたらもう少しだけ続きを書きますね。
いまさらですが自己紹介。
本読んで映画観てお茶淹れて珈琲沸かしてバイク乗って写真撮ってサカナとトカゲとクモと同居して趣味で看護師をしてる人。かっこよくて優しい人になりたい。
ときどきストッキングを破ったりしています。
いまだったらもう少し優しくできたんだろうなって思っても仕方ないよね。