「働き者の綺麗な手じゃないですか」の話。
職業柄、他人の身体に触れることが多い。
いやん。
いや、ほら、医療者なので高齢者に触れることが多い。
背部や胸部で呼吸音を聞き、腹部に触れる。
他にも患部の処置を行うことがある。
いずれも他者の身体に触れる。
よく言われる。
「汚い手でごめんね」
そう話す患者さんは多い。
高齢の患者さんに多い。
当たり前だけど加齢によってしわが増えている。
昔よりもごつごつとしているのだろう。
角質は硬くなっている。
爪も肥厚したり、割れたりしている。
老人性の乾燥に伴って指先がささくれるようなことも少なくない。
当たり前だろう。
「若い子はきれいな手をしているね」
そう言って優しく手の甲をさすられることもある。
おさわりは追加料金もらおうかな。
俺のおばあちゃんが言っていた。
「昔は掃除も洗濯も食事も全部自分の手でしていた。
畑や田んぼだってじいちゃんとしてるの。
お百姓をしていると冷たくて固いものを触るの。
クワだって振るわないと」
実家に帰ったときのことだった。
じいちゃんの大きくて黒い手で背中を軽く叩かれるとどこか安心したな。
ばあちゃんの少しひんやりした手が作った飯で育ったんだよな。
2人のしわくちゃの笑顔を思い出す。
2人ともくっそ元気に生きてるけどな!!!!
じじいちゃんとばばあちゃんのおかげで今日も実家の米が食えてるぜェ!!
あ、そういえば…
じいちゃんが腰椎圧迫骨折をした時におむつを履いていました。
医療者として失禁の不快感を知ろうと思い、おもらし体験をしました。
ご参照ください。
▽過去記事
時代はうつろい、もう「令和」だ。
戦時中や戦後の田舎のように洗濯物を手で洗ったりすることはない。
食事だってその気になればすぐに食べることができる。
種をまいて、苗を植えてといった過程を抜かすことができる。
農家の頑張りで野菜もスーパーに陳列されている。
肉だって畜産農家のおかげで新鮮なものをいただける。
スーパーやコンビニに行けばすぐに食べられるものも多い。
テクノロジーの進化で日常生活をなんでも指先ひとつですませることができる時代だ。
もうそろそろ指先もいらない「音声の時代」になるんだろうか。
だけど、現在、高齢者とよばれる人たちは俺たちが当たり前に享受している「テクノロジーを作る環境」を作ってきた世代だ。
忘れがちなことだけど先人たちが築いてきた知見や技術によって俺たちは生活ができている。
そんな時代を作った「手」が汚いだなんて思えない。
だから、俺はいつだって伝える。
「働き者の綺麗な手じゃないですか」
自分の大切な人を守ってきた手に刻まれた歴史は美しいじゃんよ。
素敵だなっていつも思う。
だからこそ、その手に触れることを意識して看護をしている。
▽過去記事
結論:患者さんににこれを言うとモテる。
ハートキャッチ プリキュア☆
見た目の美醜じゃない。
手を通して「人生そのものを美しい」と伝えているからこそ喜んでもらえているんじゃないかなって思ってる。
そんな感じに今日も働いています。
認知症でコミュニケーションがとれない患者さんとかにはそう思えないことも多々あるけどね。
がんばっていこう。
追伸。
最近、右の薬指に新しいほくろができました。